fujigelge2011-12-31

とある路地裏にある、いつも80〜90年代のアイドルの歌が流れる負け犬のホーム・グラウンド、小料理屋<幻魔大戦>にて。






BGM:純愛カウントダウン/相川恵里




オレ:「うぃぃぃぃいいいい・・・・」


女将:「不治さん飲み過ぎよ・・・もう早くお家帰りなさいよ」


オレ:「うるせぇ黙ってろ!このビフィズス菌が!!」


女将:「誰がビフィズス菌よ。悪口っぽく言ってるワリにそれ善玉菌じゃない」


オレ:「もうダメだ・・・」


女将:「え?急にどうしたのよ?」


オレ:「もう・・・ダメだ・・・」


女将:「どうしたのよいきなり弱音なんか吐いて。今年も私のお店で一年振りかえりに来たんでしょ?さっさと振りかえってとっとと帰ってちょうだいよ」


オレ:「一年振りかえるとかもう正直どうでもいい・・・」


女将:「じゃあグダグダ言ってないで早く帰ってよ!!」


オレ:「女将」


女将:「なによ?」


オレ:「さっきからオレはかなり酒を飲んだが、一向に酔いが回って来ないんだ・・・」


女将:「ああそう」


オレ:「精神的に地に足が付いてないと言うか、宇宙空間を彷徨っているような・・・これからどうしたらいいのかわからない・・・そんな状態なんだ・・・」


女将:「そう言えば不治さんいつもならギャーギャー意味わからないコトまくしたててるのに今日は神妙な顔つきでずっと大人しいもんね。今年なんかショックなコトでもあったの?」



オレ:「今年・・・?そんなモンじゃねぇ・・・もう今年も終わろうとしてるこの年末の・・・この12月に・・・一気に今年最大の絶望が襲って来ちまった・・・」



女将:「な・・・何かしら・・・?今日の不治さんのマジ凹みっぷり・・・尋常じゃないわ・・・何かいやなコトを聞かされるような気がして・・・な・・・なんだか怖いわ・・・」



オレ:「こ・・・今月・・・」



女将:「・・・・・ゴクリ・・・・・」



オレ:「お気に入りだった2人の風俗嬢が今月いっぺんに店辞めちまいやがった・・・・」(医者にガン告知されたような顔で)



女将:「さ、もう帰って」(のれんを終い始める)



オレ:「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!オレはこれからどうやって生きていけばいいんだ!!!!!!み○○ちゃんの誕生日プレゼント用に描いた似顔絵まだ渡してないのによおおおおおおおおおおお!!!!!!!!辞める時、店のホームページで告知するって言ってたじゃねぇかよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」(小皿をかじりながら号泣)



女将:「プロの漫画家がそんな手口使って風俗嬢口説いてたの!!?ごめんマジで引いたわ・・・」


オレ:「最近知り合いの女の子数人に軽い気持ちで似顔絵描いてプレゼントしたらビックリするほど喜ばれたんだよ!!!こりゃ使えるなって思うだろそりゃ!!!」



女将:「で、味しめたのね・・・」



オレ:「いいじゃねぇか!!!金銭絡んでない物あげて本当に喜ぶ女がいるなんて幻想だと思って今までずっとそんなコトやってこなかったんだからよ!!!」



女将:「今まで物凄く屈折した女性観で生きてきたのね・・・」



オレ:「合コン行ってもなんもねぇし、好きな女に遊びに行こうってメールしても無視されるし、そんなモン風俗でも行かなきゃやってられねぇんだよ・・・」(握りしめたマリア像の目から血の涙が)



女将:「無視って・・・不治さんそれうっとうしがられてるから手引いた方がいいわよ?もう諦めなさいよ。気持ち悪いわよ




オレ:「オリを見捨てないでくれようううううううう!!!!オリの顔がそんなに汚ねぇのかようううううう!!!!!オリが群馬の生まれだからってナメんじゃにーよううううううう!!!!!!」(マリア像を粉々に握りつぶしながら)



女将:「群馬ってあんた生まれも育ちも大阪じゃない。ヤバいわ・・・くどき屋ジョーの毒薬仁*1(どくぐすりじん)のマネし始めた・・・こうなったらもう手がつけられないわ・・・すぐにでも帰ってもらわないと」



オレ:「ニラレバ定食食ってる頃に戻りたくねぇよううううううう!!!!!なんでオリは石原裕次郎みてーな顔じゃねぇんだよううううううう!!!!!!!」(冷めたおでんをポケットに入れるという奇行をしながら号泣)




女将:「ちょっと!!!お店がおでんの汁でビチョビチョになるからやめてよ!!!もううっとうしいから早く帰って!!!!」




オレ:「うわあああああああああああ!!!!みんな・・・みんなオレの元から去って行く!!!!女はみんなオレを裏切っていきやがる!!!くっそー!!!!やさぐれてやる!!!!もう誰も信じるもんか!!!!オレは一人で生きてやる!!!!こうなったら手首に軽い傷付けてやる!!!!!」(手首に割り箸をゴリゴリ押しつけながら)



女将:「死ぬ覚悟はないのね」



オレ:「おい女将」



女将:「何?」



オレ:「もうお前でいい。オレのセフレになれ」



女将:「死ね」(のれんの先っぽで頭を思いっきり突く)




オレ:「あっ・・・!」(額から血を吹きだし床に倒れる)














?:「パ・・・パ・・・・パパ・・・・・パパ!起きてパパ!!」



オレ:「う・・・ううん・・・」(目をこすり目を覚ます)



女の子の声:「ママー!!パパが起きたよー!!」



オレ:「おいおいクリス、パパの上に乗っかるんじゃない。8歳になったのに本当におてんばな子だな。そんなんじゃ素敵なレディになれないぞ?ハハハ!」



クリス:「パパこそソファーで居眠りしてたら風邪ひいちゃうよ!今日は私と遊んでくれるって約束したでしょ!!」


オレ:「ああ、今日はクリスとたっぷりと遊んでやるぞ!」



クリス:「パパさっき凄くうなされてたけど、どうしたの?」



オレ:「ん・・・いや・・・長い夢を見てたようだ」



クリス:「夢?どんな夢見てたの?」



オレ:「ああ。パパが凄く冴えない男で三流漫画家っていう夢だったよ」



クリス:「アメリカ空軍少佐のパパが凄く冴えない男で三流漫画家!!?フフフおもしろーい!!ねえねえ他にどんなコトがあったの!?」


オレ:「ユリアじゃない別の女の人と結婚して離婚もしたんだ」


クリス:「ええ!?ママと違う人と結婚したの!?」


オレ:「あとなんだったかな?大喜利イベントを立ち上げたり、コントをしたり、お気に入りの風俗嬢がいっぺんに2人もやめて絶望したりしてたな」


クリス:「ええ!?パパが!!?その夢おもしろーい!!ねえねえ大喜利って何なの?」


オレ:「さあね。パパにも良くわからないよ。とても長い長い・・・イヤな夢だったよ。よし、今日はみんなでショッピングにでも行くか」


クリス:「やったー!!パパとお出かけするの久しぶり!!」


オレ:「ん?ユリア、この前買った私のスーツはどこだったかな?」


ユリア:「フフフ。スーツはあなたの部屋に置いてあるって言ったじゃないですか」


オレ:「ハハハ。さっきの夢と言い、ちょっと疲れてるみたいだな」


ユリア:「あなた大丈夫?今日はあなたの誕生日よ?しっかりしてね」


オレ:「ハハハ!すまないすまない」


クリス:「ハッピバースデートゥーユー♪ハッピバースデートゥーユー♪ハッピーバースデーディアダディ〜♪ハッピバースデートゥーユー♪」


オレ:「ハッハッハ。ありがとうクリス」


クリス:「パパ!いつも優しいパパに誕生日プレゼントあげる!」


オレ:「ん?なんだい?」


クリス:「この日のタメに私が一生懸命描いたパパの似顔絵よ!」


オレ:「ほう、おてんばのクリスが私に似顔絵を?どれどれ見せてごらん」


クリス:「ジャーン!!ほら!パパそっくりでしょ!?」













ドドドドドドドド・・・












オレ:「そ・・・・・その絵は・・・・・・・夢で見た・・・私が風俗嬢にプレゼントしようとして描いた似顔絵!!!!?」










パアアアアアア・・・・・(目の前に眩いほどの光)







オレ:「うわっ!!なんだコレは!!!?」



どこからか聞こえて来る声:「君は異次元人ヤプールによって別次元へ飛ばされている。私は君を呼び戻しに来た」



オレ:「お・・・お前は誰だ!!!」



どこかで見たコトのあるシルエット:「優しさを失わないでくれ。弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえその気持ちが何百回裏切られようと。それが私の、最後の願いだ」


オレ:「その台詞は・・・!!!もしかして・・・ウルトラマンA!!!?」









?「・・・・さん・・・・じ・・・・不治・・・・不治さん!!!」


オレ:「ん・・・?こ・・・ここは?」


女将:「良かった!!不治さん生きてたのね!!危うく私殺人犯になるところだったわ!!!」


オレ:「お・・・女将・・・?クリスとユリアはどこへ行ったんだ・・・?」


女将:「クリスとユリア?それストリートファイター2のガイルの娘と嫁の名前じゃない


オレ:「・・・そうか・・・するとあれはガイルのエンディングで有名な夢オチの夢だったのか・・・」


女将:「今はあのガイルのエンディング夢オチじゃない説の方が有力よ?」


オレ:「でもあれどう見ても夢オチにしか見えねぇぞ」


女将:「ところで不治さん頭大丈夫なの?病院行く?」


オレ:「いろんな意味で自信はないが大丈夫だ。いや、だいじょぶだぁ」


女将:「そう、志村っぽく言える余裕があるなら大丈夫ね」


オレ:「女将・・・オレ・・・女をもう1度信じてみるよ」


女将:「ど・・・どうしたの不治さん・・・?さっき女なんて信じねぇって言ってたのに・・・?」


オレ:「ウルトラマンAは男と女が合体して変身するヒーローで子供の頃から今まで「ダセぇヒーローだな」ってずっと思ってたけど・・・ウルトラマンAは教えてくれたんだ。男と女が合体するって気持ち良いから何度裏切られても諦めるんじゃないってコトを!!!」


女将:「え?」



オレ:「オレ、また良い風俗を探すよ!!!」



女将:「・・・・・・」



オレ:「よーし!!!明日エロい店をいっぱい検索するぞー!!!」(額からドボドボ血を垂らしながら店を出て行く)



女将:「・・・汚ね」(のれんの先っぽに付いた血を雑巾で拭きながら)








藤寿男の後悔日誌OMMZ   第三部   裏切りのサキュバス   

*1: