死を呼ぶ写メール

この話は私がキャバクラに良く行っていた数年前に遡ります。
私は当時ミクちゃんという娘を良く指名していて、鬱々とした日々の中で活力を得ていました。
ミクちゃんは当時20歳で良く喋る明るい女の子でした。
ミクちゃんは土田世紀や、カネコアツシなどの漫画が好きで、会うたびに良く漫画話に花を咲かせていました。
そして漫画の話をしているうちに、ミクちゃんの男の友人に漫画みたいな人がいるという話になり、私は興味津々にその友人の話を聞きました。
その人はどの辺が漫画みたいなのかと聞くと、額に死という文字の刺青を自分で入れたと言うのです。
私はそんなキン肉マンみたいな人間は絶対いないと主張しましたが、ミクちゃんは本当にいると言い張るのです。
漫画の中のキャラクターが額に肉や骨や米と書いてるのでさえ相当イカレているのに、額に死は流石にウソだろと私は言ったのですが、ミクちゃんは本当にいると一歩も引きません。
じゃあ証拠を見せてやると言わんばかりにミクちゃんはケータイを取り出し、そいつの写メールを見せると言いました。
さっきまでウソだと思っていた私でしたが、ケータイの写メを見せようとする行為に一瞬ホントか!?と驚きました。
でもそれでも心の中の半分ではまだウソだと思っていたのです。
しかし、見せられたそのケータイに写ってる男の額には間違いなくハッキリと漢字で死という文字が刻まれていたのです。
しかも、自分で入れた刺青なので字は汚く、若干右に寄っていました。
私は爆笑しました。
お前は一体何マンなんだと。
見たコトはないですが、死神だって額にこんなわかり易い字は書いていないはずです。
話によると、そいつは体のところどころに自分で入れたうろ覚えの龍の刺青とかもあると言うのです。
その人間落書き帳と化したそいつに私は会ってみたいと思いました。
しかし、会ってどうなる?
私にはそんな人間の顔を見てちゃんと話せる自信がありません。
ひとしきりそいつのおもしろ写メを見て爆笑した私はキャバクラを出ました。
でも、爆笑はしたものの、私は
「あれマジックで書いたんじゃねぇの?」
という疑いを持っていたのです。
場をシラけさせないタメに、私は敢えて騙されたフリをしていたのです。
そして、そんなコトもとうに忘れた数日後、私は難波を一人でブラブラと歩いていました。
すると、戎橋、所謂ひっかけ橋の彼方から、奇妙な男がこちらに歩いて来たのです。

その男の顔を良く見ると・・・・・・・・額に死の文字が!!?




キャーーーーーーーーーーーー!!!




あいつです。
額に死と言う文字が書いている人間は、もうあいつしかいません。
いや、日本にそんな男が何人いるのかって話です。
顔は全然覚えていませんでしたが若干文字が右に寄っていたんで間違いなく彼でしょう。
っていうかホントに刺青だったコトに驚きました。
私はその奇跡の出会いに驚き、狼狽しましたが、それよりもなによりも笑いを止める方が困難でした。
フランダースの犬の主人公ネロのように、僕が1番見たかったモノが今目の前にやって来たのですから。
私は戎橋でそいつとすれ違うギリギリまで笑いを堪えその場を乗り切りました。
大名行列を見送るような緊張感がありました。
もし、あそこで爆笑していたら私は彼に殺されていたかもしれません。





いかがだったでしょうか?
背筋が凍りましたか?
この世には世にも奇妙なコトはたくさんあります。
もしかしたらあなたも彼に出会えるかもしれません。
字を消してなかったら。
以上。