fujigelge2005-03-04

アオォォォォン・・・ワンワン・・・

とある路地裏にある、いつも80〜90年代のアイドルの歌が流れる負け犬のホーム・グラウンド<小料理屋:幻魔大戦>にて。


BGM:(パニック・イン・マイ・ルーム/宍戸留美
オレ:「ういいぃぃ・・・・」
女将:「あらあら不治さん・・・・・まーたそんなに飲んで・・・・・このセリフ何べん言ったか分かんないけど、もうそろそろお家に帰ったら?また終電に乗り遅れるわよ?」
オレ:「うっせーよ!!!別に只酒飲みに来たんじゃねぇんだ!!!金払うからオレがココで何時間いようがオレの勝手だろ!!!黙ってろ!!!この極道ステーキがあああ!!!!!!」
女将:「・・・・・・いや・・・・・・私<清水宏次郎>じゃないし・・・・・・極道でもないし・・・・・・そんなコトよりまたなんかあったの?もう!!ホント精神力が思春期真っ只中ぐらいに弱い人ねぇ・・・・・それにウチのお店のカウンターで<プチプチを潰す>のはやめてって何度も言ってるでしょ!!!お店が暗くなるからやめてよ!!!」
オレ:「うるせえよバカ!!!プチプチぐらいでガタガタわめくな!!!!それに別に思春期真っ只中な悩みなんて生憎だがオレには持ち合わせちゃいねぇんだよ!!!お前みたいな図太い神経にゃ分からない<男の哀愁>ってやつだ!!!勘違いすんじゃねぇ!!!」
女将:「男の哀愁ねぇ・・・・・・悪いけど不治さんからはまったくそんなモン感じられないんだけど・・・」
オレ:「チッ!!分からねぇ奴だなあ。いいか?男には自分の世界があんだよ!!!そうだなあ・・・・・・例えるなら空を翔る一筋の流れ星だ。」
女将:「それアニメ<ルパン三世>のオープニングテーマの<歌詞>の1部じゃない・・・・・何勝手にパクってんのよ・・・・・<安倍なつみ>みたいになりたいの?」
オレ:「なっちの悪口を言うなああああああ!!!!!」
女将:「別にファンでもないクセに・・・・・」
オレ:「まあな」
女将:「で?今日は何があったの?」
オレ:「チッ!!おいおい。今度は保護者ヅラか?別にオレはお前に話聴いてもらう為にココに来てんじゃねぇんだよ!何様のつもりだお前は!!?」
女将:「じゃあもういいわよ!!」(店じまいしようとする)
オレ:「・・・・・・・・・・・・・」(女将の服をつかむ)
女将:「・・・・・・何?この手は?離してよ。」
オレ:「・・・・・・・・・・・・・」(捨て犬みたいな顔)
女将:「もう!!ホント面倒くさい男ねぇ!!!!何よ!!!言いたいコトあるんなら言いなさいよ!!!!私も忙しいんですからね!!!」
オレ:「おい女将・・・・・」
女将:「何よ?」
オレ:「昔にオレの描いた漫画読んだコトあるよな?」
女将:「・・・・ええ・・・・あるけど・・・・・それがどうかしたの?」
オレ:「・・・・・・・・・・・そ・・・・・そんトキどう思った・・・・・?」
女将:「・・・・・・・・ま・・・・・・・・・・・まあおもしろかったと思うわよ・・・・・・・・・」
オレ:「・・・・・・何?その<点々の多さ>は・・・・・?」
女将:「・・・・いや・・・・・なんて言うかその・・・・・・・」(うつむき加減で)
オレ:「女将!!!!!オレ達は長い付き合いだよな!!!?なら分かるだろ!!!?オレがテキトーなベンチャラが嫌いだってコトがよおお!!!!!ハッキリ言ってくれや!!!!ハッキリとつまんなかったらつまんなかったって言ってくれよおお!!!」
女将:「いいの?」
オレ:「あ・・・・・やっぱいい・・・・」
女将:「・・・・ホント不治さんガラスのハートねぇ・・・・・・いや、別につまんないって意味じゃないのよ?」
オレ:「ホントか!!!?女将!!!!!」
女将:「いや・・・・・ただ・・・・・その・・・・・・・」
オレ:「た・・・・・ただその・・・・・・何だ・・・・・・?」
女将:「ただ・・・・・ちょっと・・・・・・<読んだ後何も残らない>って言うか・・・・・<ふざけすぎてる>って言うか・・・・・・・」
オレ:「・・・・・・・へへ・・・・・・やっぱりそうか・・・・」
女将:「やっぱり?」
オレ:「ああ・・・・・今日オレんトコにヤンマガの担当編集から電話があってよう・・・・・」
女将:「へー。確か2人いたわよねぇ?○里さん?○中さん?」
オレ:「○中氏だ」
女将:「へー。で、その担当さんは何か不治さんに用事があったの?もしかして仕事のオファーでもあったの!?」
オレ:「・・・・・いや・・・・・過去に掲載された作品を返却したいって話だ」
女将:「あら・・・・そうだったの・・・・・まだ<長いトンネルの中>なのね・・・?」
オレ:「ああ・・・・<とんねるず>だ」
女将:「・・・・・その<つまんない>返しから見てそのトンネルはまだまだ続きそうねぇ・・・・・」
オレ:「で、その担当さんから今後のオレの身の振り方やら何やらアドバイス貰ってよう」
女将:「へー。担当さんってそこまでお世話してくれるモンなの?」
オレ:「ああ。基本的には漫画家と担当編集は二人三脚なモンだ」
女将:「で?なんてアドバイス貰ったの?」
オレ:「・・・・・・・不治さんは<バブル経済時>にデビューすれば売れっ子になったかもしれないけど・・・・・・今は難しいって言われた・・・・・・・・」
女将:「・・・・・・・ま・・・・・また<微妙>なコト言われたのねぇ・・・・・それはどう言う意味なの?」
オレ:「つまり今の漫画業界は<深いメッセージ性>を追求する漫画が<良い漫画>とされているらしいんだ。要は読者はそう言う漫画を読んで<感動>したり、<人生の足し>にしたりしたいと言うのが今の主流らしい」
女将:「ああ。そう言われればそうかもしれないわねぇ。あんまり今ギャグ漫画がヒットしてるなんて聴かないし」
オレ:「だからお前がオレの漫画を読んで受けた感想は間違っちゃいないんだ」
女将:「・・・・・・そうねぇ・・・・・不治さんの漫画って他人に<一切何も残さない>漫画だしねぇ・・・・」
オレ:「人生の足しになるだあ?勉強になるだあ?ためになるだあ?冗談じゃねえ。そんなモンクソ喰らえってんだ!」
女将:「ホント嫌いだもんね。そう言うメッセージ性っぽいの」
オレ:「担当が分析するに、今や漫画は<文化>と言っていい地位を確立した。それに伴って漫画を読む読者の姿勢も変わってきたそうだ。つまり漫画は<一種の快楽の為>に存在する時代じゃないらしいんだ。それに今<不況>だろ?みんなそんな不安なトキにギャグ漫画なんか読んでる余裕がないと言うのが担当の分析だ」
女将:「なるほどねぇ。だから不治さんみたいな<下らないモノ>ばっか描いてるギャグ漫画家の人達にとっては不利な状況なのね?確かにバブルのトキだったらみんなそんな漫画読む余裕もあっただろうし、それに今は<お笑いブーム>だから笑いたかったらそっちに行くもんね・・・・あ!!・・・・・ごめんなさい・・・・・私<下らない>なんて言っちゃって・・・・・」
オレ:「いや。その通りだ。オレの描く漫画は下らないし、只読者に笑って貰おうと、読後感なにも残らないように意図的にそう言う風にしようと作っている。それは自分で自覚してやってるこった」
女将:「え?なんで読後感何も残らない方がいいの?」
オレ:「お笑いとかギャグ漫画に<ファインプレー>は存在するが、<名シーン>はいらねぇってこった。笑いってのは瞬発力だ。相手の意表をついてなんぼだ。だからお笑い作品を見たり読んだ後<覚えてる>ようじゃその笑いは<ダメな作品>ってこった。もし漫才を全て覚えててみろ。全っ然おもしろくねぇから」
女将:「な・・・なんか・・・・寂しい話ねぇ・・・・記憶に残らない為に作るって・・・・」
オレ:「寂しくなんかねぇさ・・・・その一瞬の笑いが欲しい為にオレ達ギャグ漫画家は存在するんだ・・・・・パッと光ってあとに残るのは真っ白な灰だけだ・・・・・・(<矢吹丈>っぽく)それに担当さんはそんなオレの下らない漫画が好きだとも言ってくれた・・・・・・担当さんが周囲の編集者にオレの漫画を見せて「下らない」と一蹴されたトキでも、彼等にはこの下らなさを受け止める<余裕がないんですよ>と言ってオレの味方をしてくれたもんだ・・・・・・そしてその返却しようとしたオレの漫画を今読み返してもおもしろかったとも言ってくれた・・・・・担当さんは今でもこんな野良犬ギャグ漫画家のファンでいてくれたんだよ・・・・・・・」
女将:「・・・なんか・・・いい話ねぇ・・・・・」(少し涙ぐむ)
オレ:「しかし・・・・・・・しかし、いくらあんた等<2人>がオレの漫画やらネームを読んでおもしろがってくれてもオレには<一銭も入ってこない>んだよおおおおおおおおお!!!!!!!!!!オレはあんた等2人<だけ>を楽します為に描いてるんじゃねぇんだよおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!もっと金をおおおおおおおおおおお!!!!!!!印税生活をオオオオオオおおおおおおお!!!!!!!!」(号泣)
女将:「・・・・・・いい話かと思いきや・・・・・・やっぱり本音はそこなのね・・・・・でも不治さんそんなコト言っちゃ担当さんに失礼でしょ!せっかく良くしてくれてる人達なのに!」
オレ:「・・・・・・確かにいい人達だよ・・・・・でもネーム何本も送って「いやー今回の新作もおもしろかったよ。でもボツ。やっぱ俺等含めて<3人だけ>おもしろいみたい。今度またおもしろいの描いて<俺等>に見せてよ」・・・・・って・・・・・・・おもしろいのに<ボツ>ってなんちゅー理由だ!!!!もっと編集部のみんなにそのおもしろさを説明してくれよ!!!!もっと・・・・・・もっとプッシュしてくれよおおおお・・・・」
女将:「・・・・な・・・なんかその人達普通に楽しんでる<ただのファン>になってるのね・・・・?」
オレ:「くそおおおおお!!!!!大人数にウケてええええええ!!!!!!多数決に勝ちてえええええええ!!!!!!そして売れてええええええ!!!!!」


          プチプチプチプチ!!!!!(手に持った<プチプチ>を思いっきり絞る)



女将:「でも不治さんが売れるにはもう1回<バブル景気>が来ないとダメなんでしょ・・・・・?その担当さんの話だと・・・・・・・」
オレ:「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!<小泉>いいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!お前のせいでオレは売れないんだアアアアああああああ!!!!!!!!!!もう1回日本を<バブル経済>にしやがれえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!もう1回<橋本>を総理大臣に城オオオオおおおおおおお!!!!!!!!こんちくしょうオオおおおおおおお!!!!!!!!!」(人に見せられないほどの男泣き)
女将:「・・・・・・・・く・・・・・・・国を巻き込んだスケールのデカイ<他力本願>ねえ・・・・・・・・・」
オレ:「うああああああああ!!!!!!ワンレン、ボディコン!!!ジュリアナ東京!!!カンバーーーーーーーーーーック!!!!!!!!!」
女将:「・・・・・・・・・・・・・」(のれんを外し、店じまいを始める)
オレ:「・・・・・・お・・・・・・女将・・・・・」
女将:「何?」(聴いて損したと言う顔で)
オレ:「・・・・・・・・オレにお前のワンレン、ボディコン姿見せて・・・・」
女将:「・・・・・恐ろしいほど無駄な悪あがきねえ・・・・・・そんなバカみたいなカッコ嫌だっつーの」
オレ:「・・・・・やっぱり?」
女将:「バブルは不治さんの潰したプチプチみたいに弾けたんだから、元には戻らないわよ」
オレ:「・・・・・・・・・・・・・・」(ジッと全て潰したプチプチを見る)
女将:「・・・・何ジッとプチプチ見てんの?早くお家に帰りなさいよ」
オレ:「・・・・・・・・いや・・・・・・・・潰したプチプチが超能力で元に戻るかなあと思って・・・・・」(プチプチに念を送る)
女将:「・・・・・・ダメだこいつ・・・・・・・・」


♪心ごーとー生きて行ーきーたくーてー楽園ーのードーアーかーらーーー・・・・・ひとーり・・・・・
BGM:(南野陽子/楽園のdoor)