恐怖のプレゼント


あれは私がゲーセンのアルバイトを辞めた1998年にさかのぼる。
辞めたと言っても店長と反りが合わず辞めさせられたと言っていい。
私は当時もアルバイトをしながらコツコツ漫画を描いていたんだが、全然成果は上がらずで、これからどうしようと言った感じだった。
で、すぐに次のバイトを探すのもアレなんで、とりあえず失業保険で食い繋ぐか?と思い、職業安定所に行くコトにした。
しかし、その職業安定所は私の家からは結構な距離があって、面倒なコトこの上なかったが、働かずにお金が貰えると言うのでバスと電車に揺られながら毎月行くようになった。
だが働かずにお金は貰えると言っても、働く気を見せないとどうやらお金は貰えないようだったので、役所の人にいちいち次の働く場所を決めろ的な書類を書かされるハメになった。
第一希望の欄とか、第二希望の欄とかあるんだが、頭の中は漫画家と言う職業で一杯。
どうしてもそれ以外思いつかなかったので、素直に第一希望に漫画家と書く世間知らずな私。
そしてその紙を役所の人に渡したところ、その職業はなりたいからなれるモノではない的なコトを、大人っぽい言い回し丁寧に私に言ってくれた。
そんなバカみたいなやり取りも済んで、一応貰う物も貰った私は、駅の近くの公園で本気で将来を考えたりした。
そしてひとしきり将来を考えたところで、おもいっきり今の状況が暇だと言うコトに気づく。
あ〜真っ昼間から暇だ暇だと思ってた私の目の前に、ワリと大きいデパート西友が飛び込んだ。
「そう言えば今お金持ってるし、とりあえず暇な時間もあるコトだから、ゲームボーイでも買うか」
そう思うしょうがないパンダちゃん
早速西友に入り、一目散におもちゃコーナーに行く。
しかし、おもちゃコーナーに行ったものの、おもちゃコーナーは無人くん状態。
真っ昼間だからなのか、この店が流行っていないのか人っ子一人いない。
隣の婦人服コーナーを見てもほとんど客も店員もいない。
「もしかしたらこのまま万引きしてもお縄にならないんじゃないか?」
と思うも、根っからのいい人の私は店員を探す方を選んだ。
良く見ると婦人服コーナーでしゃがんで作業している女の人を見つけたので呼んでみると、その店員が血相を変えて私のところに走って来た。
「すみませ〜ん!!何かお探しでしょうか!!?」
その店員は相当若いねぇちゃんだった。
・・・・・・カワイイ!!!!!
って言うかドストライクだ!!!!
まあドストライクであったとしても、今日は私はゲームボーイを買いに来たのだし、このドストライクのねぇちゃんとメーキング・ラヴするような根性もないので、そのねぇちゃんにゲームボーイが欲しいと素直に言う。
するとそのねぇちゃん
「分かりました!!・・・・・アレ?少々お待ちください!!!」
と言ってその場から一旦離れる。
一体どうしたんだ?と思うも、少々待つコトにした。
少々待ったらねぇちゃんが必死に走って帰って来る。
「じゃあゲームボーイを今出しますので!!!」
そう言うと、ねぇちゃんびっくりするようなコトを私に訊く。
「・・・あの・・・・・ゲームボーイって・・・コレですよねぇ・・・・?」
「はい・・・・・それがゲームボーイです・・・・」
で、そのねぇちゃんが棚の鍵を開けてゲームボーイの引き出しを開けた。
さっきどっかに行ったのは、この棚の鍵を取りに行ったようだった。
・・・・・・・・・・カワイイ!!!!!
初々しい!!!!
「あんたは少女漫画の主人公か!!?」
と突っ込みそうになるドジっ子ぶりだ。
たぶんこの娘の本当の担当は婦人服コーナーだと思うんだが、どっからどう見ても新人さん丸出しのたどたどしい対応。
引き出しを見て、ゲームボーイにはいろんなカラーがあると言うコトに今気づいたと言う感じで
「他にもカラーがございますけど、どれがよろしいですか?」
と言うねぇちゃん。
もうこのねぇちゃんにノックアウト寸前になる私。
「そうやなあ・・・・・じゃあそのスケルトンでいいです」
と、テキトーに色を決めた瞬間、このねぇちゃんからとんでもないコトを言われる。




「あの、プレゼントですか?でしたらプレゼント包装にしますけど」




・・・・・・・・・・・・・・・・・。





ええーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!?????




誰も言ってなーーーーいよ!!!!!!!
プレゼントなんてオレ言ってなーーーーーーーいよ!!!!!!
ユタではそんなエッチな本売ってなーーーーーーーーーいよ!!!!!!!!(ケント・デリカット
たぶんこのねぇちゃんゲームボーイと言うおもちゃは大の大人は買わないとでも思っていたのだろうか?
私はいきなりプレゼントと言う言葉を口にされたのと、ハクいねぇちゃんの前で自分用に買うと言うのが恥ずかしかったのとが交錯して一瞬焦って、



「ああ・・・・・お・・・・・甥っ子にプレゼントで・・・・」



と言うウソを言ってしまった。
まあウソと言ってもバレるワケがないので平然と当時流行っていたポケモンも一緒に買うコトにした。
だが、一瞬
「買ったばっかりのゲームボーイって電池って入ってたっけ?」
と思い、そのねぇちゃんに訊いてみたところ
「あっ、じゃあ電池もお買いになられますか?」
と言うので電池も買うコトにした。
そしてレジでプレゼント包装をされたゲームボーイポケモンと電池を清算してそのねぇちゃんとは別れた。
「このまま家に帰ってポケモンでもしよう」
そう考えるのが普通の思考だと思う。
だが私は買ったらすぐにやりたい!!と思うパンダちゃんなので、すぐに西友の屋上に行き、テントの張られたうらびれたゲームコーナーに行って、ゲームボーイプレゼント包装をビリビリと破り、電池とポケモンをセットした。
しかしそこであるコトに気づく。
ゲームボーイの箱の中に電池入ってるじゃ〜ん!!」
でもまあこんなモン消耗品だから後で買う手間省けたんで良しとする。
そしてスイッチオン!
ゲームが始まった。
屋上のゲーセンの管理をしてるおじいちゃんに訝しい顔をされながらゲームに興じる私。
すると、デパート内で何やらアナウンスの声が聞こえた。
「先ほどおもちゃコーナーでゲームボーイをお買い上げになられたお客さま、恐れ入りますが、もう1度おもちゃコーナーへお越し下さい。先ほどおもちゃコーナーで・・・・」
ええーーーー!!?
そのお客さまは私しかいない!!
いや、間違いなく私だ!!!
一体何事だ?
もしかしたら清算のトキお釣でも間違えたんだろうか?
兎に角呼ばれたのは私に違いないので、やりかけたポケモンを紙袋に入れておもちゃコーナーへ行くコトにした。
おもちゃコーナーに着くと、さっきのねぇちゃんと、もう1人大御所と言う感じのおばちゃんの店員がいた。
ふとねぇちゃんの方を見ると、少しショボンとしていた。
私がどうしたんですか?と訊くと、そのおばちゃんはとても申し訳なさそうにこう言った。
「すみませんが、先ほどお買い上げになったゲームボーイをよろしければお見せ出来ますでしょうか?」
一瞬私は何か疑わしいコトでもしたんじゃないかと驚き、おばちゃんの言うままにゲームボーイを渡した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!






なんとそこにはプレゼント包装をビリビリに破いたゲームボーイのあらぬ姿が!!!!???
その上そのゲームボーイには電池もポケモンもガッチリセットされている!!!!!!
ねぇちゃんの方をチラっと見るとちょっと笑ってるし!!!!!!!!
「プププ!野郎プレゼントとか言ってたけど、テメェのタメに買って、しかも買ってすぐゲームしてやがる」
ってか!!!!?
で、そのおばちゃんが言うには、ゲームボーイは箱の中にあらかじめ電池が入っていて、さっきねぇちゃんが買わせた電池は買う必要はなかったので、良ければ払い戻し出来ますがどうでしょうか?と言う話だった。
つまりこのねぇちゃんが新人で不手際があって申し訳ないと言うコトだ。



おばはん・・・・・・・・・・・・。





行き届いたサービスありがとよ・・・・・・・。





新人教育も見事だよ・・・・・・・・。




でもオレのこの恥ずかしさはどうしてくれるんだああああああああああ!!!!!!!






そのトキ私は多少赤面症のケがあるが、これまでにない真っ赤な顔
「・・・・・いや・・・・・どうせ消耗品なんでいいです・・・・・・」
と答え、ダッシュ西友から逃げ帰った
もちろんねぇちゃんの顔など一切見ずに
そして私は家に帰った後も、袋の中のビリビリに破られたプレゼント包装を見て、顔面を真っ赤にさせたのだった。





お・・・・・恐ろしい体験だった・・・・・・。
死ぬかと思った・・・・・・・。
いかがだっただろうか?
とても身の毛のよだつ話で失神を起こしていないだろうか?
私は思い出して失神しそうです。
くれぐれもみなさんウソなどつかないように。
以上。