fujigelge2006-09-02

アオォォォォン・・・ワンワン・・・

とある路地裏にある、いつも80〜90年代のアイドルの歌が流れる負け犬のホーム・グラウンド小料理屋<幻魔大戦にて。




BGM:禁断のテレパシー/工藤静香





オレ:「ういいいいぃぃぃぃ・・・・」

女将:「今年はもう来ないと思ってたのに、とうとう厄介なのが来ちゃったわ・・・・」

オレ:「ういいいいぃぃぃぃ・・・・」

女将:「ああ・・・しかしこの寝顔いつ見ても腹立つわ・・・・」

オレ:「むにゃむにゃ・・・・もう仏跳牆(ファッチューチャン)は食べれないよう・・・・」

女将:「ファッチューチャンて・・・・そんな美味しんぼでしか聞いたことない高級料理食べる夢見てるの・・・?ああ・・・・腹立つわ・・・・一発ぶん殴りたいわぁ・・・・」

オレ:「むにゃむにゃ・・・・さあ・・・最後にこのファッチューチャンをお茶漬けにして〆るか・・・・・」

女将:「あああああ!!!!僧侶も我慢できずに塀を跳び越えて食べに来るという極上スープをお茶漬けに!!?もう我慢できないわ!!!ぶん殴ってやる!!!」

           バキ!!!(殴った)

オレ:「・・・・アレ?ここ何処!!?お家じゃない!!?お母さんは!!?お母さんは何処にいるの!!!お母さーーーーーん!!!!」(号泣)

女将:「あんたは人ん家で眠りコケた子供か?不治さんここは小料理屋幻魔大戦よ!!もう終電来ちゃうから、さっさと起きてお家帰りなさいよ!!!!」

オレ:「ああ・・・幻魔大戦か・・・・一瞬お前がお母さんかと思ったが、あまりにも若いんで一瞬驚いたよ」

女将:「ま・・・まあ・・・不治さんったら・・・。私そんなに若く見えたの?」(頬を染めながら)

オレ:「ああ、森光子の精神年齢ぐらいかと思ったよ」

女将:「・・・・・相変わらず褒めてるんだか、けなしてるんだか分からないコト言うわねぇ・・・・」

オレ:「そういうトキは大体けなしてると思え!!!このハイヒールモモコの娘紗音琉(さとね)があああああぁぁぁぁ!!!!!

女将:「それが罵声なのかどうかわからないけど、兎に角早く帰ってよ!!私も早くお店閉めたいんだから!!!それとカウンターに散らかしたゲームボーイポケットカメラのプリントシールの台紙も早く片付けてちょうだい!!!っていうか早くカメラ付きのケータイ買いなさいよ!!!」

オレ:「ガタガタシャラクセーコト言ってんじゃねぇよ!!!久しぶりに来てやったんじゃねぇかよ!!もっともてなせ!!このハイヒールリンゴの昔の髪型があああああぁぁぁ!!!

女将:「久々に会ったのに一切変わってないみたいね・・・・。変わってないって言うコトはまた何かあったんでしょ?」

オレ:「ああ・・・・先週末に東京くんだりまで行って漫画の持ち込みしてきたんだよ」(ゲームボーイポケットカメラのプリントシールをカウンターに貼り付けながら)

女将:「・・・また懲りずに行って来たんだ・・・?で?今度は何処に持ち込みに行ったの?」(カウンターに貼られたゲームボーイポケットカメラのプリントシールを剥がしながら)

オレ:「ヤングチャンピオン

女将:「・・・・・・・・な・・・・・・・・・・なんか私不治さんとは長い付き合いだけど、不治さんの行動が一切読めないわ・・・・・思わぬところからパンチが飛んできてリアクションが取れなくてごめんなさい」

オレ:「お前の気持ちも良く分かる。オレでさえ良くわかってないからな

女将:「・・・そ・・・そうなんだ・・・・で?どんな感じだったの?っていうか毎回思うんだけど、持ち込み行っていつも編集の人との関係をウヤムヤで終わらせるところから先に直した方がいいわよ」

オレ:「なんか編集の人と話してて、こっちの思ってるコトが全然伝わってないとモチベーション下がっちゃってなあ・・・・。確かにそこはオレの悪いクセだ」

女将:「あら?やけに素直じゃない」

オレ:「流石にもうそろそろいろんな目処をつけんとイカンからな」

女将:「へー。じゃあもう不治さんはヤングチャンピオンでなんとかするつもりなんだ?」

オレ:「ああ、そのつもりだ。」

女将:「なんか決意のようなモノを感じるんだけど、そんなにそこの編集さんと馬が合ったの?」

オレ:「編集が女だったんだよ

女将:「え?女性の編集さんだったの?へー、いるもんなのねぇ。私てっきり編集さんってみんな男の人だと思ってたわ。で、その編集さんとは馬が合いそうなの?」

オレ:「ガチでタイプだ」

女将:「え・・・?なんて?」

オレ:「ガチでタイプだ」

女将:「ご・・・ごめんなさい・・・言ってる意味が良くわからないわ・・・もう1回言ってくれる?」

オレ:「編集がオレのタイプの女の人だった」

女将:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(ナレーション「不治のあまりの壊れた発言で、女将の周りの時間が止まった」)

オレ:「そして時は動き出す」

女将:「は!!!?(止まった時間から開放された)ご・・・ごめんなさい・・・・・今とても恐ろしい幻聴を耳にしたんで驚いちゃった」

オレ:「幻聴ではない!!編集が自分で萌えキャラだと自覚してない20代前半の女子だったんだ!!!

女将:「私、不治さんのコトダメだとは思ってたけど、こんなにヤバい人だとは思わなかったわ・・・」

オレ:「だって持ち込み原稿見せるテーブルに座って待ってたら、「すみませ〜ん・・・」って言いながらとっとこ走りで来たんだぞ?で、何処の馬の骨ともわからない持ち込み野郎にやたらペコペコするんだぞ?オレ持ち込みでこんなに和んだのは初めてだよ」

女将:「でもそれって和んだってだけでしょ?もしかしたらただの新人さんかもしれないじゃない。そう言うのも萌えって言うのかしら・・・?」

オレ:「まあ、そこまではちょっと気の小さい新人さんぐらいだったんだが、オレの原稿読んでる最中に、オレに書かせる持ち込みに来た人用のアンケート用紙を忘れたコトにはたと気づいて「ごめんなさ〜い!アンケート用紙忘れたんで取りに戻ります〜ちょっと待って下さ〜い」ってまたとっとこ走りで取りに帰るドジっ子を見て完全にコラぁ本物だって思ったね」(ゲームボーイポケットカメラで写真を撮りながら)

女将:「その本物って言う意味もまったくわからないんだけど、結局あんたはヤングチャンピオンで萌えて帰って来たってコトなの?だったら何でウチのお店に来たのよ?不治さんはウチの店で愚痴言いに来てるんじゃなかったの?」

オレ:「そこだ本題は

女将:「随分長いプロローグねぇ・・・こっちはもうずいぶんうんざりしてきてるんだけど」

オレ:「おい、女将。お前天体戦士サンレッドって漫画知ってるか?」

女将:「ああ、ヤングガンガンで連載してる特撮ヒーローのパロディっぽいギャグ漫画でしょ?それがどうかしたの?」

オレ:「それに設定がモロ被りしてたんだよ」

女将:「え?モロ被りってどんぐらい被ってたの・・・?」

オレ:「その女の編集さんにそこを突っ込まれてよう・・・・どうもその編集さんてのがその漫画のファンらしくて、自腹で買ったその漫画の単行本見せて貰ったよ・・・したら引くぐらい被ってたよ・・・」

女将:「不治さんその漫画知ってたの?」

オレ:「もちろん知らなかったさ・・・ここ数年オレ漫画読んでねぇんだよ・・・」

女将:「完全に勉強不足ね」

オレ:「ああ・・・・まさかオレの得意の特撮ネタで被るとは思ってなかったんで自分でもビックリしたよ・・・・あの作品かなり温めてたのになあ・・・・温め過ぎて腐っちまったよ・・・・・」(男泣き)

女将:「なんで温めてたのよ?さっさと描かないからこんな目に遭うんじゃない。」

オレ:「女将ぃぃぃ!!!貴様はまったくわかっとらん!!!いいか!!!?医師の免許を持ってる手塚治虫先生が何故ブラックジャックをあんな土壇場で発表したかわかるか!!!?」

女将:「そう言えばそうねぇ。それまでずっとSFモノ描いてたもんね」

オレ:「いいか!!?自分の得意分野はそう易々と描かねぇモンなんだよ!!!そんだけオレは土壇場に追い込まれてたってこった!!!その渾身の作品がまさか被るとはこちとら夢にも思わなかったよ!!!!チクショおおおおおおおおお!!!!!」(ゲームボーイポケットカメラを床に叩きつける)

女将:「・・・不治さんホントついてないわね・・・・っていうかドンクサイわ・・・」(哀れみの表情で壊れたゲームボーイポケットカメラを拾う)

オレ:「でもこの作品にたどり着いた経緯や、細かいディテールをその編集に説明したら、おもしろいって言って一緒に悔しがってくれたんだ。やっぱあの人良い人だな。あの人のタメに頑張ろうって思ったよ」(頬を赤らめ遠いところを見つめて)

女将:「不治さんもうお店閉めていい?」(カメ虫の臭いを嗅いだような顔で)

オレ:「あ、こっから女子の修学旅行の夜みたいな恋バナになるんだけど」

女将:「その夜は当分明けなさそうね」

オレ:「あ、上手いコト言うなあ女将!今夜はオレの恋バナを夜が明けるまで語ってやるよ!」

女将:「いや、そう言う意味じゃなくて当分不治さんの漫画家としての夜が明けそうもないって言う意味よ」

オレ:「・・・上手いコト言うなよ・・・・」