人造芸人オワライダー

fujigelge2011-07-26


そんなこんなで今日も私が描いた漫画の話です。









この作品は
ヤングマガジン関西っていう関西限定の雑誌を新しく出したいんで、藤くん大阪の人だから描いてみない?」
と担当編集さんに言われて描いた作品です。
で、この雑誌は雨上がり決死隊や、バッファロー吾郎や、FUJIWARAなどの関西芸人さんが原作を書いた漫画が売りで、大阪色の強いコテコテな感じの雑誌にしたかったようです。
この当時まだ雑誌業界そこそこ景気良かったんですかね?
関西限定って無茶な雑誌ですよ。
その注文を受けてから何本かネームを描きましたが没が続きました。
まず最初に描いたのが、舞台が1980年代頃の設定で、東京に住んでる関西芸人が大好きな小学生の主人公とその友人が、ドリフ絶頂の頃の時代にも関わらず夏休みを利用して憧れの横山やすしのセスナを見るタメに八尾空港まで旅に出て最後に本物のやっさんに出会いセスナに乗せてもらうという、映画「スタンド・バイ・ミー」のような話を考えて、正直これはおもしろいと思ったんですが没になりました。
オチに絡んでくる横山やすしとセスナ>がピンとこないというようなダメ出しで。
私はコアな関西人なら絶対おもしろい展開だから大丈夫だと言いましたがダメでしたね。
それから次に考えたのが、当時大阪はオリンピック開催地に力を入れていたので、それに対抗するイギリスは、大阪のオリンピック開催地への動きがどこまで進んでるのかを調べるタメに凄腕の諜報員トーマスを大阪へ送るという話でした。
大阪に長い間スパイ活動をしていたスティーブという諜報員と、凄腕諜報員トーマスのコントみたいな内容です。
要は、大阪に長期滞在していたスティーブが関西人に毒されて使い物にならなくなって、凄腕諜報員トーマスが振り回されるというギャグ漫画です。
これも私的には大阪人にしかわからないあるあるネタが満載でコテコテだし、関西限定の雑誌なら尚OKだろと思ったんですがダメでしたね。
だいたいこの雑誌作ってる編集の人が東京の人なんで、これらのネタ読んでもおもしろいワケないんですよ。
その時点でこの雑誌に不安を感じました。
で、次に考えたのが人造芸人オワライダーです。
私と担当編集さんの共通してる<ヒーローモノが大好き>という部分をくすぐってOKを出させた形です。
オワライダーはタイトルから見てわかるように、人造人間キカイダーのパロディです。
まずネタ元であるキカイダーがどういう話か簡単に説明した方がオワライダーという作品が伝わり易いのでまずキカイダーの説明を簡単にします。
キカイダー光明寺博士に作られたロボットで、キカイダーの体には人間の良心がわかる<良心回路>またの名を<ジェミニ>と呼ばれる回路があって、人間と同じような感情が芽生えるコトが出来るロボットなはずだったんですが、この良心回路(ジェミニ)が不完全であったタメにキカイダーは人間の心が理解できずに苦しみ続けるという話です。
要はピノキオがこの作品のモチーフになってるんですよ。
で、オワライダーはどうなのかと言いますと、オワライダーは東大寺博士に作られた<芸ができる芸人ロボット>で、オワライダーには<芸人回路>という<自分の芸をもっと磨きたい>と思う回路があるんです。
オワライダーは<おもしろいお笑いとは一体何なのか?>という答えを探し求め、芸を磨くタメに旅をするというお話になってます。
ほとんど下地はキカイダーと同じです。
オワライダーはα興業という吉本興業のような事務所に預けられ、客からもギター漫談が出来るロボットとして人気を博すんですが、α興業はオワライダーにぬるいギター漫談と客イジリしかプログラムしないワケですよ。
そこへある日、オワライダーの芸人回路が
「これじゃあすぐに飽きられる」
と判断し緊急作動。
そのままα興業を脱走し、本当の芸を磨く旅に出たというのがお話の最初にプロローグとして必ず入ってます。
で、敵なんですが、これはα興業の社長から
「オワライダーを連れ戻した奴に報奨金一千万をやる」
と言われたそこそこ年齢を重ねた売れない芸人たちです。
オワライダーはしょーもないですが一応芸の出来る珍しいロボットでα興業のドル箱スターだったワケですから、社長は何が何でも連れ戻したいワケですよ。
芸人たちは金のタメに躍起になってオワライダーを探し捕まえようとするんですが、オワライダーは追手の芸人に対しギャグのネタ振りをして突っ込みで頭をどついて倒します。
何故そんな回りくどい方法で倒すのかと言うと、それはオワライダーにはアイザック・アシモフのロボット工学三原則*1が適用されてるので、人に対して暴力を振るえないからです。

アイザック・アシモフ著 「我はロボット」より)

 第一条  
  ロボットは人間に危害を加えてはならない   
  また、人間に危害を与える危険を見過ごしてはならない
 第二条  
  ロボットは人間の命令に従わなくてはならない   
  ただし第1条に反する場合はこの限りではない
 第三条  
  ロボットは第1条、第2条に反するおそれがない限り
  自分を守らなければならない


突っ込みは芸人的には<突っ込まれた方はおいしい>から危害でも暴力でもないので、突っ込みで芸人の頭をどつくのはアイザック・アシモフのロボット工学三原則から言えば暴力ではないんですよ。





百均ショップを経営して失敗した芸人を突っ込みで倒すオワライダー





そしてオワライダーの場合は芸人回路が作動してしまったコトによって、ちゃんとした芸を身につけるコトが優先されたタメに、第二条の<ロボットは人間の命令に従わなくてはならない>を背きα興業から脱走するコトが出来たんです。
私はパロディというモノはネタ元の作者を尊敬し、その上でかなり練らないと良いパロディではないと思ってる人間なので、この作品は石ノ森章太郎先生へのオマージュやリスペクトを大好きなお笑いというテーマに絡めて描きました。
まあ、たいそうなコト書きましたが、読むとビックリする程くだらないです。
でも正直言って、こんなパロディより没ったネームの方が大阪人には受けたんじゃないか?と未だに思います。
そんなワケで人造芸人オワライダーの話でした。
以上。

*1:漫画版人造人間キカイダーの冒頭にも引用されている。