サイキックソルジャー正義

fujigelge2011-08-12

今回でこの企画は最終回です。
サイキックソルジャー正義は自分の中で特に思い入れがある作品なんで結構長文です。





この作品は別冊ヤングマガジンで連載の枠を6回貰って連載された、初めての連載作品です。
今まで紹介したギャリアン、佐藤陽一、オワライダーを見て、私がまったく売れる気がない人間というのが伝わったと思います。
しかし、このサイキックソルジャー正義に関しては誰が読んでもウケる漫画を描こうという意識で描きました。
まずウケそうなギャグ漫画の要素の1つが学園モノですよ。
とりあえず学園モノにしとけばなんとなくおもしろく見えるという魔法のジャンルですよ。
まさに王道。
ここからスタートして、当時、梶原一騎先生原作の「愛と誠」と言う古い学園漫画を読んでいて、
「男と女が主人公の漫画にしよう」
と決めました。
愛と誠は主人公の早乙女愛という女子生徒と、太賀誠という男子生徒の愛憎劇で、タイトルの愛と誠は2人の名前なんですよ。
で、私は
「じゃあオレは愛と正義でなんかやろう」
と思い、主人公の名前を<愛と正義>に決めました。
そして当時、「ドン・キホーテ」の小説も読んでいて、自分を騎士だ思い込んでるドン・キホーテと、それを陰で支える従者のサンチョ・パンサのやり取りがおもしろいなあと思っていたので、自分のコトを正義のヒーローだと思い込んでる高中正義(たかなかまさよし)>という男と、正義を陰で支える超能力少女<若林あい>という女の子を考えました。
高中正義は実際にいる有名なギタリストの方で、前から名前の字面がカッコイイなあと思っていたんでこの名前にしました。
あと、高中正義と言えば皆さんご存じ天龍源一郎の入場曲<サンダー・ストーム*1>の作曲者でも有名ですね。
若林あいの名前はテキトーに付けました。
で、高中正義は自分のコトをヒーローで特別な人間だと思ってるけど実際は何の能力もなく、若林あいは超能力を持ってるけど本人はこの能力を何故か嫌ってると。
正義に関しては自分のコトを勇者や騎士だと思い込んでて特別な人間だと思ってるけど実際は何の能力もないドン・キホーテと同じような性格にしましたが、あいをサンチョ・パンサのようにするとただのパクリなんで<超能力少女>にしました。
ある日この2人が出会い、<正義はあいの超能力を自分の能力だと勘違いする>というストーリーラインを考えて、これはおもしろそうなんでそこからいろいろ肉付けをしていきました。


正義とあいの出会い


あいの超能力を自分の能力だと勘違いする正義





若林あいは一時期自分の周りの物が宙に浮くポルターガイスト現象のようなモノが頻繁に起こり、学校の友人から気持ち悪がられ、自分の周りで起きるこの現象に凄く悩むんですが、ある日あいはこれを<自分の超能力が漏れてるから起こる現象>だというトコに気付くんです。




自分の異変に気付くあい






そしてあいは超能力を制御できるように訓練して漏れる超能力を止められるようになり、サイコキネシスやテレポートなどを自在に操れるようにまでになるんですが、それが出来た頃には友達は一人もいなくなってしまったという悲しい過去があり、それからあいは自分の超能力を嫌い始め、転校先では大人しい普通の女の子になろうと思ったら高中正義というヒーローバカに出会ってさあ大変。
と言うドタバタギャグ漫画にしました。
あいの超能力を自分の力だと正義が勝手に思い込んでるだけなんで、「サイキックソルジャー正義」と言うタイトルになってますが、正義はサイキックソルジャーでも何でもないんですよ。
しかもタイトルに「正義」って書いてるけど主に正義に振り回される若林あい視点で話は進んで行きます。
なので、正義はただの痛いヒーローオタクです。
しかし、ここまでアイデアを出したは良いが、ここで<水と油の正義とあいを一緒に行動させないと話にならない>と言うピンチが発生。
別冊ヤングマガジンの月間連載の枠を6回与えられたので、最低6回は続けないといけない。
これさえ乗り越えれば話は続けられる。
しかし、乗り越えられないとこのアイデアは水の泡。
そんなヤバい感じ。
そんで捻り出したのがこんなアイデアです。
正義は自分の超能力が思うように発揮できないのは何故だ?と悩み(何故ならあいの超能力だから)、ある日正義はあるコトに気付く。
それは<自分の超能力が発揮出来たのは自分の命が危ない時>だったというコト。
正義は
「はははは!!そうか!!そういうコトか!!!」
と、笑顔で道路に飛び出し武田鉄也よろしくダンプカーの前で仁王立ち。
そのバカな行動を偶然見たあいは超能力で正義を遠くへ吹っ飛ばすんですが、急な出来事だったから力を出し過ぎて正義を壁に激突させ気絶させてしまいます。
あいは気絶した正義を学校の保健室へ連れて行きますが、先生に命に別条はなく気を失ってるだけと言われホっとします。
そして正義は保健室のベッドで気絶してる間夢を見るんですが、夢の中で正義はウルトラマンに出てきたウルトラ兄弟の長兄ゾフィー兄さん*2に出会います。
そしてゾフィー兄さんに、
「正義。お前は立派なヒーローだが、お前にヒーローとして欠けているモノが1つだけある」
と言われ、自分を完璧なヒーローだと思っていた正義は大きなショックを受けます。
「兄さん!!それは一体何なのですか!!?」
という問いにゾフィー兄さんはこう答えます。
「ヒーローとしてお前には「愛」が欠けている!!「愛」こそ全て!!!」
そう言ってゾフィー兄さんは、正義のタメに持ってきた命を1つ与えて*3去って行き、そして正義は目覚め、保健室にいるあいの肩をギュッとつかみ、
「若林<あい>!!オレにはお前が必要だ!!そういえば超能力に目覚めたのもお前に出会ってからだった!!オレはお前と一緒にいると真のヒーローになれるのだ!!」
と、ゾフィー兄さんの言った「愛」を「あい」と勘違いしてそれ以降正義はあいに付きまとうようになると。
これで正義とあいを一緒に行動させる理由を乗り切りました。


ゾフィーっぽい「心の兄さん」



心の兄さんにお前に足りないのは「愛」だと説教される正義



あと、自分的に正義のデザインで気に入ってるのは眼鏡ですね。
今でこそ眼鏡男子って言葉がありますけど当時はそんなのなかったですし、漫画やアニメでも眼鏡をかけた男が主人公ってほとんどいなかったし、眼鏡をかけたヒーローもマシンマンくらいでほとんどいなかったんでかけさせてみました。
ペルソナっていうゲームに出てきた眼鏡キャラなのに一人称が「オレ」で、高飛車で勝ち気で男らしい性格の南条のイメージが結構強いです。






眼鏡かけたキャラってほとんど一人称が「僕」の優男でしょ?
「だったらオレが熱血バカ眼鏡男キャラを作った初めての人間になってやろう!」
って思ったんです。
そんで、この作品は男と女が主人公なのでラブコメ路線に出来るんですが、私はスゴく薄〜〜〜〜くですが、高中正義と若林あいの成長と青春を描きたかったんですよね。
最終回とかも考えてましたよ。
でもたいして人気のない漫画だったからそこまで出来なかったけどな!!!
描いてる本人は
「ヤバい!!これ売れる!!!」
って思ってたのになあ。
世間とズレがあったようだなあ。
おもしろかったのに。
やっぱ絵が下手ってのはマズいよなあ。
そんなワケでサイキックソルジャー正義の話でした。
以上。

*1:

*2:漫画では円谷プロ著作権云々の問題がややこしいので目線を入れて体のデザインも曖昧にし、ゾフィー兄さんとは言わず「心の兄さん」と言ってます。

*3:ウルトラマンの最終回でこういうシーンがあるんです。